「痩せたらきれい」は、本当でしょうか?
「あと3キロ痩せたいんです」
ピラティスを15年教えていると、この言葉を何百回、いえ、もしかしたら何千回聞いたかわかりません。
女性と体重計の関係は複雑です。

朝、少し減っていたら機嫌よく一日をスタート。
500グラム増えていたら、
「昨日、私が食べたのは空気だけのはずやのに」
と、体重計を疑い始める。
でも、まずお伝えしたいことがあります。
体重が減れば、必ずきれいになれるわけではありません。
もちろん、健康のために減量が必要な場合もあります。
けれど、「細ければ細いほど美しい」というのは、大きな誤解です。
ピラティスが目指しているのは、ただ体重を減らすことではありません。
適度に筋肉がつき、体が引き締まり、姿勢が整い、その人らしい美しいラインが見える体。
私は、そんな体がいちばん健康的で美しいと思っています。
体重計には、姿勢も筋肉も映らない
体重計が教えてくれるのは、体全体の重さです。
でも、
- お尻がきれいに上がっているか
- お腹がすっきり引き締まっているか
- 背中が丸くなっていないか
- 首が前に突き出していないか
- 立った時に美しく見えるか
そこまでは、体重計は一切教えてくれません。
体重計、意外と情報量が少ないんです。
数字だけ出して、こちらの気持ちを散々かき乱しておきながら、姿勢については完全にノーコメント。
なかなか無責任な機械です。
同じ身長、同じ体重でも、姿勢や筋肉のつき方によって見た目は大きく変わります。
体重が軽くても、筋肉が少なく、背中が丸まり、お尻が下がっていたら、「健康的で引き締まった体」とは少し違います。
反対に、体重は以前とほとんど変わっていなくても、筋肉がついて姿勢が整うことで、
「痩せた?」
「スタイルよくなったね」
と言われることがあります。
体重計の数字は同じなのに、周囲からの評価だけが急に上がる。
これが、ピラティスでよく起きるうれしい現象です。
ピラティスは「体重を落とす競技」ではありません
ピラティスは、短期間で大量にカロリーを消費し、体重を一気に落とすことを目的とした運動ではありません。
「1回で3キロ落とします!」
なんて言えたら予約が殺到しそうですが、それはもうピラティスではなく、何か別の事件です。
ピラティスでは、呼吸をしながら体の深い部分にある筋肉を使い、骨盤や背骨を正しい位置へ導いていきます。
普段うまく使えていなかったお腹やお尻、背中の筋肉を少しずつ目覚めさせていく。
その結果、体重の数字以上に、見た目がすっきりしてくることがあります。
目指しているのは「ただ小さくなること」ではなく、美しく整うことです。
痩せすぎている人にも、ピラティスは必要です
ダイエットというと、体重を減らすことばかりが注目されます。
けれど、ピラティスに来られる方の中には、すでにとても細い方もいます。
細いから何もしなくていい、というわけではありません。
筋肉が少なくて疲れやすい。
姿勢を保てない。
冷えや肩こりがつらい。
体重は軽いけれど、体に力が入りにくい。
そんな方もいらっしゃいます。
痩せすぎている方には、必要な筋肉を少しずつつけて、体を支えられるようにすることが大切です。
一方、体重が増えすぎて動きにくくなっている方には、無理なく体を動かしながら、健康的な状態へ近づいていくことが大切です。
つまり、ピラティスの目的は、
全員を細くすることではありません。
細すぎる人をさらに細くして、最終的に存在感まで消してしまう運動ではないのです。
その人にとって無理のない、健康的でバランスのよい体を目指していきます。
「何キロになりたい?」より「どんな体になりたい?」
ダイエットを始める時、多くの方が目標体重を決めます。
もちろん、数字を目安にすることが悪いわけではありません。
ただ、体重だけを目標にすると、食べる量を極端に減らしたり、筋肉まで落としてしまったりすることがあります。
そこで私は、
「何キロになりたいですか?」
だけでなく、
「どんな体になりたいですか?」
と考えてほしいと思っています。
姿勢よく歩きたい。
好きな洋服をきれいに着たい。
丸いお尻をつくりたい。
お腹を引き締めたい。
疲れにくい体になりたい。
年齢を重ねても、自分の足でどこへでも行きたい。
こちらの方が、体重計の数字よりずっと具体的で、前向きな目標です。
50キロになった瞬間だけ幸せで、50.5キロになったら不幸になる。
そんな人生は、あまりにも体重計に主導権を渡しすぎです。
食事とピラティス、それぞれの役割
体脂肪を落として減量したい場合は、ピラティスだけですべてが解決するわけではありません。
毎日の食事、睡眠、活動量なども大きく関係します。
ピラティスをした帰りに、
「今日は運動したから大丈夫」
と、ご褒美のケーキを3個食べたら、ピラティスも少し困ります。
ピラティスは魔法ではありません。
でも、体を動かす習慣ができると、自分の体への意識が変わります。
せっかく動いたから、今日は少し体にいいものを食べよう。
姿勢がよくなってきたから、もう少し続けてみよう。
昨日より体が軽く感じる。
そんな小さな変化が積み重なって、生活全体が整っていきます。
目指したいのは、いちばん軽い自分ではなく、いちばん素敵な自分
私たちは、つい「もっと痩せなければ」と考えてしまいます。
でも、美しさは体重計の数字だけでは決まりません。
必要な筋肉があり、姿勢が整い、体のラインが引き締まり、元気に動けること。
細すぎず、無理に削りすぎず、自分にとって心地よい体であること。
ピラティスが目指すのは、そんな体です。
だから、体重がなかなか減らなくても、落ち込まないでください。
以前より背筋が伸びた。
ウエストのラインが変わった。
お尻の位置が少し高くなった。
疲れにくくなった。
鏡に映る自分が、前よりちょっと好きになった。
それは全部、立派な変化です。
目指すのは、人生でいちばん軽い自分ではありません。
人生でいちばん、健康的で、引き締まっていて、自分らしく輝いている体。
体重計とはほどよい距離でお付き合いしながら、ピラティスで一緒に、本当に美しい体をつくっていきましょう。